「ブランディングズ城の夏の稲妻」/ブタ狂想曲?? | 旧・日常&読んだ本log

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2005年3月10日~2008年3月23日まで。

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P.G.ウッドハウス, 森村 たまき

ブランディングズ城の夏の稲妻 (ウッドハウス・スペシャル)

青葉学園物語 右むけ、左! 」にも、「ぶたぶた会議だ ぶう!ぶう!ぶう!」なる章がありましたが、こちらの本もまた、ある意味ではブタ狂想曲と言えるのかも。

でもね、舞台は英国は美しい郊外のお城。ここで巻き起こる騒動もまた変わってくるわけで…。

執事付きのお城。厳格で恐ろしい一族のおば。ちょっと(かなり?)抜けたところのある当主。一族のはみ出し者のおじ。身分も気もいいけれど、どこかひ弱な青年。同じく、気の良さは十分に分かるけれど、どうも現世的には成功を収めているとはいえない青年。更にそんな彼らのしっかり者の恋人である女性たち。彼らが結ばれるためには、被信託人である当主の協力が不可欠で…。ところが、当主は彼等に注意を払うどころか、高貴なる飼い豚、シュロップシャー農業ショー肥満豚部門銀賞受賞のエンプレス・オブ・ブランディングズの世話に夢中…。

もーこういうの大好きなのです。これもまた、恩田陸さんいうところの、「イギリス人のミステリ」(「小説以外 」より)ではありますまいか? ま、今回のは「冷徹な観察眼と、些かの稚気、教養と合理性に、ちょっと風変わりのスパイス」というか、「かなりの稚気に、風変りのスパイス」という感じなんだけれど…。ミステリというか、ドタバタ群像劇だしね。

国書刊行会から出ている<ウッドハウス・コレクション>は、表紙のお洒落な感じもずっと気になっていたのだけれど、残りも読むぞ!と決意したのでした(今回の本は、<ウッドハウス・スペシャル>。どう違うんだ??)。

言い回しなども楽しくて、ついニヤニヤしながら読んじゃいました。P・G・ウッドハウスの生年は1881年、没年は1975年。今読んでも、全然面白いのも凄いよなぁ。<ウッドハウス・コレクション>の出版年もかなり新しいので、訳のおかげもあるのかもしれませんが…。

私が楽しんだ言い回しは、たとえばこんな感じ。

イートン校とケンブリッジ大学は息子たちをしっかりと教育する。感情を露わにするのは行儀の悪いことであるという人生の基本的事実さえ理解させてしまえば、爆弾ももはや彼らの冷静さを乱し得ないし、地震だって彼らから「ふーん、それで?」が引き出せたらば好運である。しかし、ケンブリッジにも限界がある。イートンもまた然りである           (p356から引用)

キャラがあちこちで繋がってるみたいなので、そこも楽しみだなぁ。
この本で気に入ったのは、私のイギリスの執事のイメージを覆した執事ビーチ。いや、きちんとした執事なんだけど、ほんのちょっとばかり、賭けごと(といっても、競馬情報くらいなんだけど)などの誘惑に弱い気が…。そんなところも、妙に人間味があって良かったな。

イギリスの貴族のお城を舞台にしたドタバタ群像劇。クリスティほど意地悪ではなく、クリスティのように人が死なない(他の作品は知らないけれど)。勿論、クリスティも大好きだけれど、ウッドハウスも好きーー!と思ったのでした。

目次
序文
1. ブランディングズ城に胚胎する騒動
2. 真実の愛の行方
3. センセーショナルなブタ泥棒
4. ロナルド・フィッシュの注目すべき振舞い
5. ヒューゴ宛ての電話
6. スーの名案
7. パーシー・ピルビームの仕事
8. ブランディングズ城を覆う嵐雲
9. スー登場
10. スーのショック
11. まだまだスーのショック
12. 執事ビーチの行動
13. ディナー前のカクテル
14. 有能なバクスターの敏速なる思考
15. 電話にて
16. めぐり逢う恋人たち
17. エムズワース卿の勇気ある振舞い
18. 寝室における悲痛な場面
19. ギャリー事態を掌握する
 沃地としてのブランディングズ城 紀田順一郎
 エンプレス・オヴ・ブランディングズ N・T・P・マーフィー
 訳者あとがき 森村たまき
 《ブランディングズ城シリーズ》紹介


*臙脂色の文字の部分は本文中より引用を行っております。何か問題がございましたら、ご連絡ください。