「妖怪変化 京極堂トリビュート」/京極堂シリーズはお好き? | 旧・日常&読んだ本log

旧・日常&読んだ本log

流れ去る記憶を食い止める。

2005年3月10日~2008年3月23日まで。

以降の更新は、http://tsuna11.blog70.fc2.com/で。


西尾 維新, あさの あつこ, 諸星 大二郎

妖怪変化 京極堂トリビュート


目次
鬼娘                     あさのあつこ
そっくり                   西尾維新
「魍魎の匣」変化抄。           原田眞人
朦朧記録                  牧野修
粗忽の死神                柳屋喬太郎
或ル挿絵画家ノ所有スル魍魎ノ匣   フジワラホウコウ
薔薇十字猫探偵社            松苗あけみ
百鬼夜行イン                諸星大二郎


表紙には、石黒亜矢子氏、小畑健氏の名前もありまして、お二方は、それぞれ一枚の絵のみで参加(石黒氏:京極堂、小畑氏:榎木津)ということだと思いますが、「デスノ」の小畑氏、流石の美しさであります。白黒なんだけど、これ、カラーで見たかった!

ええと、この本、amazonで評判が良くないんですが、うーむ、確かにむべなるかな。

京極堂シリーズは、蘊蓄の京極堂、破壊(でもないかしらん?)の榎木津、崩壊の関口、軽薄の益田、忠誠の和寅など(あ、木場の旦那を忘れちゃった)、立ちまくったキャラに、独特の「憑物落し」の世界観が特徴だけれど、これをそのままなぞっただけでは、そりゃー本歌の方が面白いのは当たり前。ちょっと違ったアプローチをしていたものの方が、面白かったです。

■鬼娘
京極堂へと至る眩暈坂で、中禅寺敦子は様子のおかしい女性に出会う。比良時子と名乗る女性を、敦子は京極堂へと連れて行き、兄嫁の千鶴子に介抱を頼むのだが…。
時子は自分は生き肝を食べる鬼女だと語るのだ。
 傑作と名高い「バッテリー」を読まずして語るのもあれなんですが、あさのあつこさん、「福音の少年」(どのへんが「福音」なんだかさっぱり分らず)がダメで、それ以来あまり良い印象を持っていません。で、この「鬼娘」は京極堂の世界をなぞっちゃったもので、あまり工夫が見られませんでした。

■そっくり
一族の中でも変わり者扱いされていた祖父。その祖父から届いた、亡くなる直前に書かれた「懺悔」の手紙の内容とは?
 戯言シリーズ(未読)や、「
魔法少女りすか 」シリーズの西尾さん。世界観はそのままだとは思うんだけど、あの人を出してきたところが巧かったです。これは、本家にほんとにありそうだもの。

■「魍魎の匣」変化抄。 
映画監督描くところのお話のようだけれど、これは読み通すことが出来ずに、途中でぶん投げました。こういう作中作みたいなのって、よっぽどうまくないと、どうも読めません…。

■朦朧記録
記憶の地獄を彷徨う「関口」。みな、同じように年老いた。彼の病室を訪れるのは、今では車椅子を操る京極堂。彼の姿は車椅子に座った黒衣の死神のよう…。
 これは、面白かったです。オチのある一点が気に入らない(というか、個人的感情としてイヤ)のだけれど、そうそう、トリビュートというのならこういうお話でしょう、という巧さ。

■粗忽の死神 
京亭三茶久なる落語家が語る死神の話。上方でもないのに、「京亭」を名乗るこの一門。実は初代の師匠が、箱根の旅館、仙石楼で出会った京極堂に心酔し、「京」の一字を貰ったのだという。さて、そんな経緯ゆえか、「京亭」一門は、一応憑物落しの一門でもあるというのだが。死神に自分を落とす様に頼まれた三茶久は、さて…。
 ほとんど京極堂には関係ないけど(だって、一字を貰ったって、ねえ?笑)、これは面白かったなぁ。落語だし、いい感じの軽みが出てます。

■或ル挿絵画家ノ所有スル魍魎ノ匣
絵を描かれている、フジワラホウコウ氏を知らないのですが、おどろおどろしい絵が十ページちょっと。

■薔薇十字猫探偵社
これは楽しかったな~。松苗さんの絵で、京極堂や榎木津が見られるだけでも楽しいんだけど(エノさん、私のイメージだと、もちっと線が細いけれども)、猫が!猫が!
お金持ちの家から脱走した、エジプトから取り寄せたという、美しく、凶暴で高貴な猫(野生のリビアヤマネコ)。そのお嬢様が京極堂に良く本を頼む関係で、京極堂のもとへも、女中が猫を探しに来るのだが…。実はその女中には、猫が人間の男の姿に見えていて、というお話。美しく、凶暴で、高貴な男といったら、ねえ? 和寅と益田の絵も好きー。石榴は割とぶちゃいくな猫になってました…(私の中では、割と美猫のイメージだったんですが)。

■百鬼夜行イン
百鬼夜行が百物語! その一話、「書き損じのある妖怪絵巻」が主に語られ、百話語り終わった後のオチは勿論、というやつです。

私は図書館で借りたからいいんですが、どうなんだろう、これで1200円。高いとみるか、安いとみるか? 松苗さんのが、もっといっぱい載ってたら、高くはないような気がするけど、今の構成だとちと微妙かな。

■京極堂シリーズ関連記事■
邪魅の雫 」/待ってました、京極堂シリーズ最新作!
百器徒然袋―風 」/にゃんこーー!!