「ローマ人の物語1・ローマは一日にして成らず[上]」/民族というもの、国家というもの | 旧・日常&読んだ本log

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2005年3月10日~2008年3月23日まで。

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塩野 七生
ローマ人の物語 (1) ― ローマは一日にして成らず(上) 新潮文庫

ずーっと前から、借りているのだけれど、全然手を付けられていなかったシリーズです。今週は図書館本にちょっと余裕があったので、ようやく手付け。でも、これ、私が借りてるのだけでも、23巻まであるんですよねえ。うーん、シリーズ全体を読了出来るのは、いったいいつの日か?

新潮文庫なのに艶のある表紙(私の中では、集英社、文春、講談社、中公文庫あたりは艶のある表紙なんだけど、新潮は艶のないイメージ。合ってる??)、一冊一冊がやたらと薄いところ、なぜかなーと思っていたのですが、巻頭の「『ローマ人の物語』の文庫刊行に際しての、著者から読者にあてた長い手紙」を読んで、ようやく謎が解けました。

文庫化に際し、著者、塩野さんは、文庫の源泉(本を家の外に出そうとした、アルド式の文庫、「タスカービレ」)に立ち戻ろうとしたとのこと。さらに史観で分けた単行本版を、そのまま文庫化すると、分厚くて「持ち運びが容易」という文庫の利点から外れてしまう。単行本を分冊した結果が、私が「薄い」と感じた原因だったみたい。えーと、私が薄い文庫を嫌うのは、移動時間の途中で読み終わっちゃったり、コストパフォーマンスが悪く感じるからなのですが、このシリーズに関しては、幸いにも(?)それは杞憂なようで、薄くとも時間の持ちは十分でした。

また、「本造りには、「グラツィア」(優美)を欠いてはならない」という、これまたアルドの言葉に習いつつ、また、時代を映すという意味で、文庫本の表紙には金貨と銀貨が使われているそう。ちなみに、1巻のこの銀貨は、古代ギリシアの都市国家アテネで、紀元前五二七年から四三〇年の間に鋳造され続けた、四ドラクマ銀貨。表面は女神アテネで、裏面はフクロウ。ぱっと見た限りでは、文庫の表紙は全部同じデザインだと思っていたのですが、こんなにいろいろ考えられているのだとは!

色々ひっくるめて、本に対する拘りが伝わってきて、私のこのシリーズに対する印象もぐっと良くなりました。

目次
『ローマ人の物語』の文庫刊行に際しての、著者から読者にあてた長い手紙
カバーの銀貨について
読者へ
序章
第一章 ローマ誕生
第二章 共和制ローマ
図版出典一覧


基本、自分は物語から逆に史実を引き付けて読む方なので、この辺の「物語」を知らないことは、ちょっと痛かったな~。「ペルシア戦役」(二章 共和制ローマ)などは、これって映画の「300」?(いや、見てないんですけど)と思いながら読んだし、「スパルタ」という都市の在り方は面白く読みましたが。

結局のところ、民族が政治体制を作り、政治体制がまた民族を作る。そして、それらが「国家」となっていく。確かにこうやって読み取って行くのは面白い~。うう、でも、周辺の「物語」をもっと補強したいところでありますよ。
■以前、読んだ塩野さんの本。
・「
三つの都の物語 」/あるヴェネツィアの貴族の生き方

これも気になる~。