「所轄刑事・麻生龍太郎」/その運命の前の姿・・・ | 旧・日常&読んだ本log

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流れ去る記憶を食い止める。

2005年3月10日~2008年3月23日まで。

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柴田 よしき
所轄刑事・麻生龍太郎

柴田よしきさんのRIKOシリーズのスピンオフ。ネット上を見ても、シリーズの主人公RIKOよりも、麻生の恋人であるヤクザの山内練が圧倒的に人気だし、『
聖なる黒夜 』を読んじゃうと、麻生その人にも興味が出てくるよねえ。

というわけで、この「所轄刑事・麻生龍太郎」は、あの麻生が所轄時代に出会った小さな事件を描いた連作集。後に、優秀な刑事として本庁で名を馳せ、その後、山内と出会った事で、退職する事になる麻生・・・。彼のまだ初々しい時代とでもいいましょうか・・・。

目次
大根の花
赤い鉛筆
割れる爪
雪うさぎ
大きい靴
エピローグ


龍太郎が配属されたのは、東京の下町にある高橋署。そこで起こるのは派手な事件ではなく、ごく簡単なものに見えるのだけれど、龍太郎は刑事には珍しいタイプだとからかわれながらも、一つ一つの齟齬を潰していく・・・。浮かび上がるのは、月並みな表現にはなるけれど、悲しい女の事情や、人の悪意などなど。

話の筋はさすが柴田よしきさんと言うべきか、特に問題なくするする読めちゃうので、後は安心して麻生龍太郎というキャラクターを楽しむことが出来る。

たとえば刑事という職業に対しても、たとえば出世に関しても、何事にも執着することなく、淡々と日々を過ごす龍太郎。それが、「聖なる黒夜」に繋がるのかと思うと、なんか、ねえ。だから、これは山内練に会う前の(正確には二度目の出会いが重要なわけだけど)、その運命の前の龍太郎の姿。

そして、全く報われない及川の恋情がここにも描かれていて、龍太郎に執着しながらも(聖なる黒夜」を読めば、それは狂気にすら見えるのに)、龍太郎の心が自分にはない事を、理解出来てしまう冷静さがまたかなしいというか、可哀相というか・・・。

RIKOシリーズを読んでいた時に、麻生や安藤、及川あたりは、緑子よりもかなり先輩だったので、高須などよりは幾分か影が薄かったんだよなー(そういえば、高須もいつか幸せになれるのでしょうか? なんだか、彼も不幸そう・・・)。ああ、及川の部分だけでも、読み返したい! えーと、四課にいる柄と口も悪いけど、やたらと切れ者との噂の人物って、あれ、及川だったっけなー。うーん、記憶は全て朧・・・。