「タルト・タタンの夢」/料理と謎を召し上がれ | 旧・日常&読んだ本log

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流れ去る記憶を食い止める。

2005年3月10日~2008年3月23日まで。

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近藤 史恵

タルト・タタンの夢 (創元クライム・クラブ)

目次
*Table des matieres*
タルト・タタンの夢
Un reve de Tarte Tatin
ロニョン・ド・ヴォーの決意
Une decision grace aux rognons de veau
ガレット・デ・ロワの秘密
le secret de galette des Rois
オッソ・イラティをめぐる不和
Une brouille autour d'un Ossau-Iraty
理不尽な酔っぱらい
Un misterieux ivrogne
ぬけがらのカスレ
Un cassoulet special pour elle
割り切れないチョコレート
Chocolats indibisibles
 初出一覧
 sources


メニューになぞらえた目次も実に楽しい!!

レストランとミステリと言えば、北森さんの香菜里屋シリーズ(最新刊の感想 )があるけれど、こちらもまた楽しく美味しい一冊でした♪

舞台は気取らないフランス料理を食べさせる店、ビストロ<パ・マル(悪くない)>。無口で武骨な料理長、三舟忍(表紙絵の人物ですね)に、にこやかでそつのない料理人の志村洋二、ソムリエの金子ゆき、ホール係の「ぼく」こと高築智行の四人でまわす小さなお店。接待や特別な日に使うというよりも、普段着の本当にフランス料理が好きな人間が集う店。

ほぼ新人(「タルト・タタンの夢」では、勤め始めて二か月、とある)の「ぼく」こと高築智行の視点で描かれるのがまたいいんだなー、きっと。フランス料理の説明なども、実に嫌みなく差し挟まれる。前述の香菜里屋のような凝った創作料理ではなく、フランスの家庭料理に近いものが出てくるんだけど、これがまたどーんとボリュームがありそうで、とっても美味しそう! きれいなテリーヌなどにしない、餅焼き網で焙った、分厚く切ったフォアグラ(同じく網で焼いたバゲット添え)など、いいなー、いいなー。餅焼き網が出てきたけど、料理長の三舟氏は道具に拘りのないタイプらしく、蒸籠なんかが出て来るところも面白い。

ホームズ役はこの料理長の三舟氏なんだけど、柔軟な頭を持つ人物であることが、こういったエピソードからも分かるよね。

レストランに持ち込まれる謎は、すべてお客さんが持ち込むんだけど、私はちょっと甘いかもしれないけど、恋人同士のある日の特別なメニューを描いた「ぬけがらのカスレ」と、家族の情景を描いた「割り切れないチョコレート」が好きでした。これ、シリーズ化されたりするのでしょうか。また続きも読みたいな♪