「比類なきジーヴス」/オー、ジーヴス!! | 旧・日常&読んだ本log

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流れ去る記憶を食い止める。

2005年3月10日~2008年3月23日まで。

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P.G. ウッドハウス, Pelham Grenville Wodehouse, 森村 たまき

比類なきジーヴス (ウッドハウス・コレクション)


ブランディングズ城の夏の稲妻 」に続いて、二冊目のウッドハウスです。

こちらは「ジーヴス物」と言われるシリーズらしく、最初からして既に偉大なるマンネリズムの薫りがするのだけれど、マンネリというのも決して悪いことばかりではない。物語の場合、これがぴたりとはまれば、実に安心の読み物になるわけで…。

初めて読んだのに、初めて出会った気がしないというか、いっそ懐かしさすら感じてしまうんだなぁ。

主たる登場人物は、金やそれなりの名誉はあるものの、アガサ伯母に言わせれば、人生を無為に過ごしているとばっさり切られる、バーティー・ウースター。バーティーの頼りになる執事、ジーヴス。バーティーの親友で、しょっちゅうどこかの娘に恋しては、バーティーを頼るビンゴ。「バーティー、お前とは同じ学校に通った仲じゃないか」。バーティーの恐怖の源、アガサ伯母、常に驚異の事態を引き起こす従弟のクロードとユースタス…。

ベッドで飲む目覚めの紅茶、それに続く朝食、何よりも平穏を愛するバーティーの元には、それでも様々な厄介事が持ち込まれて…。それを見事に裁くのが、バーティーの頼りになる執事ジーヴス。ただし、ただ一つ彼らが相容れないのが、バーティーの服に関する色彩のセンス。バーティーが紳士として相応しくないと思われる色を身に付けるのを、ジーヴスは極度に嫌う。そんな時は冷戦状態が続き、バーティーは一人で厄介事をやっつけようとするのだけれど、結局はジーヴスの手を借りることになり、泣く泣くその服を諦めることになる。紫の靴下しかり、素敵に真っ赤なカマーバンドしかり…。

何があっても深刻な事態にまで陥ることなく、素敵に無責任なところもこのシリーズの魅力の一つかな。知的ではないとされるバーティーだけれど、そうはいっても、機を見ては詩を諳んじ、オックスフォード大学だって卒業している(ビンゴも学友ってことは…、とオックスフォードを危ぶみたくもなるけれど)。

後、目立つのは、「賭けごと」に関する熱い心。なんだって賭けごとの対象になり(教会の牧師の説教の時間から、年に一度の田舎の村の学校のお楽しみ大会まで)、それを話すに何と「スポーツマン精神」なんてものが出て来てしまう。「スポーツ」であっても、あくまでそれは自らがやるものではなく、見て(賭けて)楽しむ対象なのです。

全体通して、素敵に怠惰な貴族ライフと言ったところ。ゆったりした気分で、くすりと笑える安心の小説ですね。

目次
1. ジーヴス、小脳を稼働させる
2. ビンゴが為にウエディングベルは鳴らず
3. アガサ伯母、胸のうちを語る
4. 真珠の涙
5. ウースター一族の誇り傷つく
6. 英雄の報酬
7. クロードとユースタス登場
8. サー・ロデリック昼食に招待される
9. 紹介状
10. お洒落なエレベーター・ボーイ
11. 同志ビンゴ
12. ビンゴ、グッドウッドでしくじる
13. 説教大ハンデ
14. スポーツマン精神
15. 都会的タッチ
16. クロードとユースタスの遅ればせの退場
17. ビンゴと細君
18. 大団円
 訳者あとがき