「死神の精度」/生か死か | 旧・日常&読んだ本log

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流れ去る記憶を食い止める。

2005年3月10日~2008年3月23日まで。

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伊坂 幸太郎

死神の精度


目次
死神の精度
死神と藤田
吹雪に死神
恋愛で死神
旅路を死神
死神対老女


目次を見てもひたすら死神死神なんだけれども、そう、これは人間界でオシゴトをする死神・千葉のお話(人間界で仕事をする死神には、なぜか地名に基づいた名前がある)。

人間界においては完全に旅人であり、様々な感情、感覚を、借りた男性の体を使って、しっとりと味わっていくブラッド・ピット主演、ジョー・ブラックをよろしく(感想はこちら )と同様に、「死神」は人の微妙な機微や、言い回しが分らないけれど、これはどちらかというと缶コーヒー「BOSS」における、トミー・リー・ジョーンズ演ずる宇宙人の方がイメージに近いかなー。余計な仕事はしないことをモットーとしているし、結構冷たくも感じそうな部分もあるけれど、自分とは違う存在である人間を、仕方ないなと見守ったり、その不思議さ、脈絡のなさを尊重しているように思うのです。

ちょっとお茶目な面も用意されていて、それは死神たちの特性として、「ミュージック」を何よりも愛するところ。調査部に属する死神のお仕事は、情報部(やつらは、いつだって必要な情報しか与えてくれない。こちらから特に聞かない限りは!)から渡されたスケジュール表を元に、死を迎える人間に接触し、その人間の死を見定めること。彼が「可」と言えば一週間後にその人間は死に、「見送り」と言えばその人間は生き続ける。大抵は「可」の判定を下すこの死神・千葉。さっさと仕事を終わらせれば良さそうなものだけれど、どうも、この死神たちは「ミュージック」を聞きたさに、調査を延ばしているようなところもある。同業者に会うのは、どこよりもCDショップの確率が高い。

仕事で人間界にやって来る時は常に雨が降っていて、これまで晴天を見たことがなかったこの死神・千葉。この短編は、短いスパンの話ではなくて、実は長い期間にまたがる話。
最後に千葉がみた景色が良い。

人間というのは、眩しい時と笑う時に似た表情になる。眩しいのと嬉しいのは似てる?