「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」/彼らと我とを隔てるものは | 旧・日常&読んだ本log

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流れ去る記憶を食い止める。

2005年3月10日~2008年3月23日まで。

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フィリップ・K・ディック, 浅倉 久志
アンドロイドは電気羊の夢を見るか?  
タイトルがかっこいいなぁと思ってたんだけど、これって実は英語そのまんまなんですね。知らなかったー。

そして、これ、映画「ブレードランナー」の原作でもあるわけですが、ところがどっこい私ときたら、映画も見てないのでした…。深夜とかにテレビでやらないですかね??

この本のことは、吉野朔美さんの「お父さんは時代小説(チャンバラ)が大好き 」にも出てきて、私も吉野さんと同じく、…今更??、と思ってたんだけど、読んで良かったです。

フィリップ・K・ディックと言えば、「奇妙な世界の片隅で 」のkazuouさんに教えていただいた「地図にない町」もとっても気になっていたのですが、こちらは実書店では探せず、うろうろしてた古本屋で先に「アンドロイド~」を見つけたので、これもまた縁というわけで、まずはこちらから。

<最終世界大戦>後、地球の大半は死の灰に汚染され、動物は死に絶えていった。すべての移民に各自の選択する型式のアンドロイド一体を自動的に無料貸与するという餌をチラつかせ、国連は惑星植民化計画を進めていたが、いまだ何千何万の人間が地球に残留していた…。

リック・デカードは、逃亡したアンドロイドを狩る賞金稼ぎ(バウンティ・ハンター)。主人を殺して逃亡した人間型ロボットは、彼にとって神話の中の絶対の悪、<殺し屋>の具現であった。ところが今回、彼が狩ることになった、火星から逃げ出した8人のアンドロイドは、ネクサス6型脳ユニットを備えた、あまりにも人間的なロボットだった。彼らとわれわれを隔てるのは、人間であればその知的能力には寄らず、誰もが備えている感情移入、共感という心理。感情移入度測定検査のみが、彼と我を見分ける術…。

しかしながら、アンドロイドに本当に魂はないのか? リックが飼っている電気羊には? また、感情移入が出来ない、若しくはその程度が低い人間は? 特殊者(スペシャル)、ピンボケと称される、少々知的能力が低いイジドアは?

あらかじめ疎外されたものたち、アンドロイドに共感するリックはおかしいのか。また、共感(エンパシー)ボックスに頼って、他人と同化した感情を得る人間たちは…。リックの揺らぎは、そのまま人間性というものへの疑問となる。

うまく言えないのだけれど、私がこれまで読んだ少女漫画やコバルト文庫(いや、SFってそれぐらいでしか読んでないのだ)のアンドロイド物がすーっと理解できたというか、良く分かるような気持がしました。

良く知られていて、でも、やっぱり読んでいないSFとしては、あと一冊気になってるのがこちら。

ジェイムズ,ジュニア ティプトリー, 浅倉 久志, ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア

たったひとつの冴えたやりかた (ハヤカワ文庫SF)


表紙の川原由美子さんの絵も綺麗だし、中をちょっと見たら、中にも絵があるんですよねえ。うーむ、こちらも読むべき? 名作と言われているものには、ジャンルを越えた良さがあるから、その分野を苦手としていても、結構読めてしまいますねえ。ハインラインの「夏への扉 」も楽しかったしさ。