「アブダラと空飛ぶ絨毯」/D.W.J.版アラビアンナイト | 旧・日常&読んだ本log

旧・日常&読んだ本log

流れ去る記憶を食い止める。

2005年3月10日~2008年3月23日まで。

以降の更新は、http://tsuna11.blog70.fc2.com/で。

ダイアナ・ウィン ジョーンズ作、西村 醇子訳
 「アブダラと空飛ぶ絨毯―ハウルの動く城〈2〉」

ハウル2とあるけれど、今度の主人公は、ラシュプート国のバザールの若き絨毯商人アブダラ。アラビアンナイトの世界を下敷きにした、「魔法使いハウルと火の悪魔」の姉妹編となる物語。

ダイアナ・ウィン ジョーンズ, Diana Wynne Jones, 西村 醇子
アブダラと空飛ぶ絨毯―ハウルの動く城〈2〉

表紙の絵がとても綺麗なので、大きな画像を載せました。真ん中の空飛ぶ絨毯に乗る寝巻き姿のアブダラ、右下のイカを咥えたイヌ、更にその下の青い瓶、月の光、夜の庭園、空中の城。この美しい絵そのままの世界が展開される。

アブダラは、インガリー(ハウルソフィーが住む)からはるか南に下った地、スルタンが治めているラシュプート国のザンジブ市のバザールに住む、若き絨毯商。バザールの隣人は、揚物屋のジャマールとその飼い犬

ある日、アブダラがいつものように、店内で空想の翼を広げていた所、「空飛ぶ絨毯」を売りたいというお客がやって来る。「空飛ぶ絨毯」を手に入れたアブダラは、絨毯のお陰で美しい箱入りの姫、<夜咲姫>と知り合うが、<夜咲姫>は彼の目の前で魔神(ジン)・ハスラエルに攫われてしまう。アブダラは怒ったスルタンの追跡を受けながら、魔神(ジン)から<夜咲姫>を助けるために、旅に出ることになる。

アブダラの旅のお供は、瓶の口から出る紫色の煙、気難しい精霊のジンニー。一日一回は願いを叶えてくれるというのだけれど、彼の叶え方はいつだって強引。かえって状況が悪くなったりもする。

「この瓶の持ち主となった者は、毎日ひとつずつ願い事が許され、ぼくはいやでもそれをかなえてやらなければならない」

さらに、ジンニーに引き合わされた、ストランジア人の兵士、なぜか彼らにくっ付いて来た<真夜中><はねっかえり>という二匹の猫を連れて、旅は続く。

全ては、その時そこに見えているものだけであるとは限らない。

ザンジブのならわしにより、美辞麗句を連ねる事が出来るアブダラ。お世辞が大好きな「空飛ぶ絨毯」も面白いし、ほとんど何にだって逆毛をたて、気に入らない時には大きくなる猫の<真夜中>も不思議。かつてはいい魔神(ジン)だったハスラエル、その弟で甘ったれのダルゼル、臆病でへそ曲がりのジンニー

全ては隠されているけれど、「悪いやつでいるのも楽しかったんだよ」というのも分かる。自分の型に囚われることなく、乱暴でも好き勝手が出来るのだもの。最後は大団円でめでたし、めでたし。全ては収まるべきところに収まるのだ。

実は、「魔法使いハウルと火の悪魔 」はあまり好みではなかったのだけれど、こちらの「アブダラと空飛ぶ絨毯」は、とても楽しく読むことが出来た。本当のアラビアンナイトをきちんと読んだ事がないので、その世界とはまた違うのかもしれないけれど、魅力的なアラビア風の世界にうっとり。ま、私はソフィーに同族嫌悪を感じていたので(長女で自意識過剰で頑固者)、ぎゃんぎゃん騒ぐソフィーの出番が、表面上だけでも少なかったのが、大きかったのかもしれないのですが。